天井にシミができている。前の雨のあと、少し広がった気がする。
雨漏りの相談を受けると、多くの方がこう考えています。「見てもらえば、どこから漏れているか分かるだろう」。
ところが実際には、どこから入った水なのかが、その場では分からないことがあります。原因の場所と、水が出てくる場所が離れていることがあるからです。
この記事では、二級建築士として、リフォームの現場から見た雨漏りの話をまとめました。原因がすぐに特定できない理由と、現場で実際にやっていること、そしてお客さんの側で記録しておいてほしいことを書きます。
まず見るのは、シミの真上にあたる外部
相談を受けたとき、私がまずするのは室内の天井のシミを見て、その位置が建物の外側のどこに当たるかを確認することです。屋根なのか、外壁なのか、サッシのまわりなのか、ベランダの下なのか。室内の位置を手がかりに、外の調査する範囲を絞っていきます。
ここが出発点になります。ただし、真上に原因があるとは限りません。入った水が部材を伝い、離れた場所に現れることもあります。
原因の場所と、水が出てくる場所は違うことがある
私が経験した現場では、屋根の棟(むね)が原因で、そこから1メートルほど離れた場所が漏れていたことがあります。棟というのは、屋根のいちばん高いところにある、面と面が合わさる部分です。
入った水は、その真下に落ちるとは限りません。下地や構造材、内装材などを伝い、侵入口から離れた場所で室内側に現れることがあります。つまり、室内で濡れている場所が、水の侵入口そのものではなく「出口」になっていることがあります。

「見ればすぐ分かるでしょう」と言われることがありますが、見て分かるのは出口のほうです。入口を探すには、そこから外側をたどっていく必要があります。
しかも、雨水は思っている以上に小さなところからも入ります。瓦のわずかなずれ、外壁の細いひび割れ、目地やサッシまわりのすき間、配管が壁を貫通している部分のまわり。目で見ても分からないようなすき間でも、雨の強さや風向きの条件がそろうと、水の入口になることがあります。入口が小さいほど、外から見ただけでは見つけにくくなります。
なお、天井や壁のシミが必ず雨漏りとは限りません。結露が原因のこともあります。見分け方はこちらにまとめています。
👉 結露は拭いても止まらない?結露しやすい家の特徴と、今日からできることの順番|二級建築士が解説
散水調査は、私の現場では最終手段です
雨漏りの調査方法として、よく紹介されるのが散水調査です。怪しい場所に水をかけて、雨漏りを再現させる方法です。
ただ、私の現場では、散水調査はどうしても原因が分からないときの最終手段にしています。理由は、散水によって雨漏りを再現させる調査なので、漏水が再現されれば、室内側に再び水が出る可能性があるからです。
原因を突き止めるためとはいえ、住んでいる家に水をかけることになります。天井や壁のシミが広がることもあります。だから、ほかに手がかりがあるうちは、まずそちらから当たります。
調査方法として有効ではある、けれど気軽にできるものではない。この順番は、会社によって考え方が違うところだと思います。提案されたときは、なぜその方法なのかを聞いてみてください。
現場では、可能性の高いところから順番に確認していく
では、散水しないときはどうするのか。シミの位置や雨の強さ・風向き、外部の状態などから可能性の高い箇所を絞り、その箇所に合った方法で処置していきます。シーリングで止水することもあります。そのあと、次の雨で漏れ方が変わったかを確認します。
一度で当たることもありますし、当たらないこともあります。ここが、雨漏りのいちばん分かりにくいところだと思います。「直したはずなのに、また漏れた」は、必ずしも手抜きではありません。可能性の高いところから絞っていった結果、まだ当たっていなかった、ということがあります。
もちろん、原因の見立てや施工に問題がある場合もあります。大切なのは、「なぜそこを処置したのか」「止まらなかったら次にどうするのか」を説明してもらうことです。
雨漏りは、一度の処置で止まらないケースもあります。工事の前に「これで止まらなかった場合は次にどうするのか」まで確認しておくと安心です。
外壁の目地のコーキングについては、こちらでも書いています。
👉 外壁塗装は10年で必要?サイディングの家で先に見るのは「目地」|二級建築士が解説
お客さんに記録しておいてほしい3つのこと
原因を絞るときに、いちばん助かるのが住んでいる人の記録です。私が聞くのは、この3つです。
- どのくらいの雨の強さで漏るか。小雨でも漏るのか、強い雨のときだけか
- どんな風のときに漏るか。横殴りの雨のときだけ漏る、という場合は入口の見当が変わってきます
- シミが大きくなっているか。日付が分かる形で、シミ全体の大きさが分かる引きの写真も残しておいてください
この3つがあると、怪しいところを当たる順番が変わります。強い雨のときだけなのか、風の向きで変わるのかで、疑う場所が違ってくるからです。
雨漏りは、業者が現地を見るときに雨が降っているとは限りません。だからこそ、住んでいる人の記録が大きな手がかりになります。スマートフォンで撮った写真が、そのまま調査の材料になります。
自分でコーキングで塞ぐ前に
ひとつお願いがあります。なんとなくの知識で、怪しそうなところをコーキングで塞いでしまうのは避けてください。
さきほど書いた現場での処置との違いは、どこから水を入れず、どこから水を逃がす納まりなのかを確認したうえで施工することです。同じシーリングでも、位置と材料と施工の仕方で結果が変わります。
理由は2つあります。ひとつは、塞いだところが、本来は水の出ていく道だった場合があること。外壁や屋根には、入った水を外に逃がす仕組みが入っていることがあり、そこを塞ぐと水の行き場がなくなります。
もうひとつは、手がかりが消えてしまうことです。あとから調べる側は、どこが元の状態で、どこが後から塞がれたのかが分からなくなります。順番に潰していく進め方とも、かみ合わなくなります。
応急処置としてやっておくなら、水を受ける、濡らしたくないものをどける、写真を撮る。この範囲にとどめておくほうが、あとが早くなります。
自分で手を入れると、あとで費用が上がることがある話は、こちらにも書きました。
👉 外壁は自分で塗っていい?あとで塗装費用が上がる2つのパターン|二級建築士が解説
火災保険について、事実だけ
雨漏りを調べていると、火災保険の話が必ず出てきます。ここは私の専門ではないので、確認できる事実だけ書きます。
- 台風などで屋根が壊れ、そこから雨が入った場合は補償の対象になることがある(補償の範囲は契約内容によります)
- 自然の消耗・劣化による損害は、原則として支払いの対象外とされています
- 保険金を請求するときは、まず加入者自身で、契約している保険会社や代理店に連絡する
「保険を使えば無料で直せます」と訪問してくる業者には注意してください。条件に当てはまるかどうかは、加入している保険会社または代理店に、自分で確認するのが確実です。
訪問してくる業者への向き合い方は、こちらにもまとめています。
👉 耐震診断の訪問業者は怪しい?「瓦が割れています」と言われたときの確認5つ|二級建築士が解説
見立てに迷うときは、複数の会社に相談する方法もある
雨漏りは、原因の見立てが会社によって変わることがあります。どこを疑うかが違えば、工事の内容も金額も変わります。
聞いておくとよいのは、どこが原因だと考えているか、なぜそう考えたか、止まらなかったときはどうするかの3つです。ここに答えられる会社なら、話を進めやすくなります。
【雨漏り修理110番】どんな屋根でもスピーディーに対応しますまとめ
- まず見るのは、天井のシミの位置が建物の外側のどこに当たるか
- 原因の場所と水が出てくる場所は違うことがある。私の現場では、屋根の棟が原因で1メートルほど離れた場所が漏れていた
- 雨水は目で見て分からないほど小さなすき間からも入る。だから入口は見ただけでは見つけにくい
- 私の現場では、散水調査はほかの手がかりで原因を絞れないときに使う。再現されれば室内側に再び水が出る可能性があるから
- 現場では雨や風の条件などから可能性の高い箇所を絞り、必要な処置をして次の雨で確認する。一度の処置で止まらないケースもある
- 記録しておいてほしいのは雨の強さ・風向き・シミの変化(日付の分かる写真)
- 自分でコーキングを塞がない。水の逃げ道をふさぐことがあり、手がかりも消える
- 火災保険は自然の消耗・劣化による損害は原則として対象外。利用を考えるときは加入者自身で保険会社や代理店に確認する
天井のシミに気づいたら、まずは写真を撮っておいてください。次の雨のときに、どのくらいの雨で、どんな風のときに広がるか。それが分かっているだけでも、原因を絞るための大切な手がかりになります。


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