外壁は自分で塗っていい?あとで塗装費用が上がる2つのパターン|二級建築士が解説

作業着とヘルメット姿の二級建築士が、外壁を指さして自分で塗る前の注意点を説明しているイラスト 住まいのこと

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外壁の汚れ、細いひび、板と板のすきま。気になり出すと、自分でどうにかしたくなると思います。材料はホームセンターで揃いますし、やり方の動画もいくらでも出てきます。

ただ、そのあと塗装を頼む段になって、「まずここを落とすところから始まります」とお伝えすることがあります。良かれと思ってやった作業が、次の工事の金額に乗ってしまうからです。

外壁に自分で手を入れる前に、知っておいてほしいことが2つあります。

  • 外壁には、ふさいではいけないすきまがあります(ふさぐと雨漏りにつながることがあります)
  • 下地処理を省いて塗ると、次の塗装で撤去や下地処理が必要になることがあります

この記事では、リフォーム専門の工務店で現場を見ている二級建築士として、この2つを説明します。自分で塗るのを止めたいわけではありません。あとで塗装を頼むことまで考えると、触らないほうがいい場所がある、という話です。

外壁を自分で触るかどうかは、作業の難しさでは決まりません

先に結論を書きます。私が現場で「それは触らないでください」とお伝えする作業のほとんどは、道具もホームセンターで買えますし、手順も難しくありません。

難しいから止めているのではありません。その場所が、雨水を外へ逃がすための排水・通気の納まりになっているか、次に塗る下地になっているからです。

そして厄介なのは、どちらも作業した直後には問題が分かりにくいことがある点です。雨漏りは次の大雨まで分からないことがありますし、塗膜の密着不良も、しばらく経ってから分かる場合があります。順番に見ていきます。

①外壁には、ふさいではいけないすきまがあります

雨漏りの相談で伺って、原因がお施主さん自身の作業だったことがあります。すきまをコーキングでふさいでいたのです。

気持ちはよく分かります。外壁にすきまが空いていたら、そこから雨が入りそうに見えます。だから埋める。ふさげば入らないはずだ、と考えるのは自然です。

ただ、外壁は「水を一滴も入れない」というだけの作りではありません。

サイディングの外壁は「入った水を外へ出す」作りになっています

通気構法のサイディング外壁では、外壁材の裏側に通気層があり、入った雨水などを外へ排出できるように納められています。強い雨や風で外壁材の裏に回った水は、そこを流れ落ちて外へ出ていきます。

サッシの下側にある小さな穴も同じです。サッシのまわりに入った水を外へ逃がすための穴で、ふさぐためのものではありません。

つまり、外から見えているすきまの中には、排水や通気のために意図的に開けてあるものがあります。すきまがすべて出口だという意味ではありませんが、代表的なのは次のあたりです。

  • 外壁の下端……通気層などに入った水を外へ排出するための納まりがあります
  • サッシの下枠にある小さな穴……水抜きのための穴です
  • 換気フードや配管まわりの下側……上と横は止めて、下は開けておく納まりがあります
  • ベランダの手すり壁の裏側や下端……見えにくい位置に水の出口があることがあります
外壁の断面図。左は下端が開いている状態で、外壁材の裏の通気層に入った雨水が流れ落ちて外へ排出される様子。右は下端をコーキングで埋めた状態で、水が出られずに溜まり、内側へ回り込む様子を示す

排水のために設けられたすきまをふさぐと、そこから出るはずだった水が逃げにくくなります。入る量が変わらなくても、出口をふさげば水の行き場が変わります。行き場のなくなった水が外壁の内部に滞留したり、別の場所へ回り込んだりすると、雨漏りにつながることがあります。

しかも、ふさいだ場所と、室内に出てくる場所は離れます。水は落ちながら横にも移動するので、天井にシミが出た真上に原因があるとは限りません。原因を探すところから始まることになります。

窓まわりが外壁の中でどうなっているかはサッシ交換は簡単?窓が外壁に埋まっている話と、費用が上がる理由で書きました。外から見えている部分は、外壁の作りのごく一部です。

すきまを埋める前に、そこが出口かどうかを確かめてください。判断に迷うなら、埋めずに見てもらったほうが早いです。

それでも、細いひび割れを埋めるのは別の話です

ここで誤解されやすいのですが、コーキングを打つこと自体がダメなわけではありません。

外壁表面の細いひび割れを補修するのは、私は条件を確認したうえで「自分でやってもいい」と答えることがあります。ひび割れは、雨水が入り込む原因になることがあるためです。埋めても、水を逃がすための納まりをふさぐわけではありません。

すきまをふさぐのと、ひび割れを埋めるのは、作業としては同じ「コーキングを打つ」に見えます。それでも意味は違います。

ひび割れを自分で埋めるなら、次の条件を確かめてください。

  • 脚立で手が届く高さまで。2階から上は、作業の良し悪しより落ちる危険のほうが問題です
  • 髪の毛ほどの細いひび。幅0.3mm程度をひとつの目安にできますが、幅だけで判断しないでください。ひび割れの形や位置、広がり方もあわせて確認する必要があります
  • 塗装できる材料を選ぶ。理由は後半に書きます
  • 古いコーキングの上に重ねて打たない。密着せず、はがすときに手間だけが増えます

反対に、幅が広いひび、階段状に折れながら続くひび、同じ向きのひびが何本も並んでいる場合は、触らずに見てもらってください。外壁の表面の問題ではなく、その奥や建物の動きが出ている可能性があります。この場合、埋めても同じところがまた割れます。

②自分で塗ると、次の塗装の費用が上がることがあります

もうひとつが、これです。雨漏りのような分かりやすい事故にはなりませんが、塗り替えの見積もりにそのまま出てきます。

外壁やベランダを、市販の塗料や防水材で塗ってあるお宅に伺うことがあります。塗った当時はきれいになったはずです。ただ、そのあと塗り替えの話になると、その塗膜の状態によっては、まず撤去や下地処理が必要になります。

外壁塗装は「塗る」より「整える」ほうが本体です

塗装工事では、色を塗ることだけでなく、洗浄や下地処理などの準備も重要な工程になります。洗って、傷んだ塗膜を落として、下地を整えて、密着させるための下塗りをする。ここまでが一続きの仕事です。

自分で塗るときに省かれやすいのが、この準備です。塗ること自体は難しくないので、洗浄や下地処理を飛ばしても、見た目はいったんきれいになります。

ただ、下地に密着していない塗膜の上に塗り重ねても、下の層ごと剥がれてくることがあります。そうなると、その部分は撤去してから塗り直すことになります。

ここが費用の分かれ目です。何もしていない外壁は、洗って塗り替えるところから始められます。自分で塗った塗膜がある外壁は、その状態を確かめて、必要なら落とす作業が先に乗ります。

外壁の塗り替え工程の比較図。何もしていない外壁は洗う・下地を整える・下塗り・上塗りの4工程。下地処理をせずに塗ってある外壁は、その前に前の塗膜を落とす工程が加わることを示す

しかも、外壁の高い位置にある塗膜を撤去する場合は、塗装工事用の足場を使って作業することが一般的です。塗装本体と同じ足場を使えるので、別の足場をもう一度組むという話ではありません。ただ撤去作業の手間が増えれば、その分が工事費に反映されることがあります。

ベランダの防水は、さらに事情が重なります

防水材には種類があります。樹脂を塗り重ねてあるもの、塗膜で作ってあるもの、シートを敷いてあるもの。見た目が似ていても中身が違うので、既存の防水層との相性を確認せずに塗ると、浮きや剥がれにつながることがあります。

そして防水は、外壁の塗装と違って水を止めるための層そのものです。剥がれた場所から水が入れば、下の部屋に出ることもあります。手が届いて面積も小さいぶん自分でできそうに見えますが、材料の相性と下地の状態を確認してから手を入れたい場所です。

コーキングの材料選びでも、同じことが起きます

先ほど「塗装できる材料を選んでください」と書いた理由が、ここです。

ホームセンターで「シリコン」と書かれた材料が手に取りやすいところに並んでいますが、シリコーン系のコーキングは、一般的な塗料が密着しにくいため、上から塗装する場所には適しません。

室内の水回りなど、あとから塗る予定がない場所なら問題ありません。ただ外壁の塗装する場所に使うと、あとで塗装する際に、その部分の撤去や下処理が必要になることがあります。細いひび割れひとつでも、そこだけ手間が増えます。

外壁に使うなら「変成シリコーン系」など、塗装できると明記された材料を選んでください。ただし変成シリコーン系でも製品によって仕様が違うので、「塗装可能」と明記された製品を選んでください。名前が似ているぶん、売り場では表示を確認してください。

サイディングの板と板の間にある目地のコーキングも同じ話です。目地は外壁の重要な部分なので、材料選びや施工方法を間違えると、あとで塗り替えや打ち替えをするときに手間が増えることがあります。塗装の予定が近いなら、目地の状態を含めて業者に相談したほうが、工程をまとめやすい場合があります。

その目地が塗り替えの時期を見るときの手がかりにもなります。詳しくは外壁塗装は10年で必要?サイディングの家で先に見るのは「目地」に書きました。

外壁まわりで、自分でやっていいこと

触らないほうがいい話が続いたので、逆側も書いておきます。水の出口でもなく、塗装の下地にもならない場所なら、止める理由はありません。

  • ベランダの排水口の掃除……落ち葉や土がたまると、あふれた水が思わぬところに回ります
  • 雨どいの詰まり取り……ただし高所は、無理に自分で作業しないほうが安全です
  • 外壁の汚れ落とし……外壁材や汚れの状態に合わせて、水や柔らかいブラシなどで。高圧洗浄機は、圧力やノズルとの距離、外壁の状態によっては、既存の塗膜や目地を傷めることがあります
  • 細いひび割れの補修……前半に書いた条件を満たす場合

掃除と手入れは、やる価値が大きい作業です。排水がきちんと流れる状態を保つことは、外壁や基礎まわりに水が集中するのを防ぎ、傷みを抑えることにつながります。

ひとつだけ注意 マンションのベランダは共用部です

分譲マンションのベランダやバルコニーは、専有部分ではなく共用部分として扱われるのが一般的です。避難経路を兼ねているためです。

掃除や日常の手入れは居住者の役割とされていることが多いのですが、床に何かを敷く、防水材を塗るといった手を入れる行為は、管理規約で制限されている場合があります。賃貸も同じで、原状回復の範囲を超えると退去時に問題になります。

戸建てでも何をしてもいいというわけではありませんが、集合住宅では特に、管理規約を先に確認してください。

塗装を頼むときは、手を入れた場所を先に伝えてください

すでに自分で塗ってしまった、コーキングを打ってしまった、という方もいると思います。隠す必要はまったくありません。

むしろ「ここは自分で塗りました」「この材料を使いました」と先に伝えてもらえるほうが、見積もりは正確になります。塗膜が密着しているか、どんな材料が使われているか。分からない部分が多いほど、金額の幅は広くなります。

塗り替えの時期そのものを迷っているなら、その場で工事を決める必要はありません。「自分でやっていいか知りたい」という相談の仕方でも構いません。何社かに見てもらえば、それぞれの説明を比較することもできます。

出てきた金額の見方はリフォームの見積もりが高い?妥当か見分ける5つの視点にまとめています。安いほうを選べばいいという話ではないので、あわせて読んでもらえればと思います。

全国の600社を超える塗装店から適切な業者をご紹介【外壁塗装セレクトナビ】

よくある質問

自分で塗った外壁でも、あとから塗り替えできますか

できます。ただしその塗膜の状態によって、やることが変わります。密着していれば洗って上から塗れることもありますし、浮いていれば落とす作業が入ります。

現地で見ないと判断できない部分なので、「いつ・どこを・何で塗ったか」「その前にどんな下地処理をしたか」を伝えられるようにしておくと話が早いです。

足場を組まずに、1階だけ自分で塗るのはどうですか

手は届きますが、あまりおすすめしません。理由は2つあります。

ひとつは境目が出ること。1階と2階で塗った時期が違うと、色の差が残ります。もうひとつは、結局あとで2階を頼むときに足場を組むことです。足場費用は建物の施工面積などをもとに算出されるため、1階を自分で塗っても、外壁塗装全体の費用がその分だけ大きく下がるとは限りません。

手を入れるなら、まずは塗ることより、掃除と点検から始めるのがおすすめです。

自分で塗った部分は火災保険の対象外になりますか

火災保険で対象になるのは、台風や大雪など自然災害による突発的な損害で、経年劣化や施工の不具合は対象外とされるのが一般的です。自分で塗ったかどうかというより、壊れた原因が何かで判断されます。

ただし契約内容によって扱いは変わります。実際の可否は保険会社に確認してください。対象になりやすい壊れ方とそうでない壊れ方については火災保険の経年劣化と風災の違いで書いています。

中古住宅の外壁に、手を入れた跡があったら避けるべきですか

避ける必要はありません。ただ「どこを、いつ、どうやったか」が分からないぶん、塗り替えの金額が読みにくくなります。

買う前のチェックは中古住宅の内見チェックリストにまとめています。外壁に限らず、金額が読めない部分をどう扱うかという話です。

まとめ

  • 外壁を自分で触っていいかは、作業の難しさでは決まりません。場所で決まります
  • 水の出口をふさがない。外壁のすきまや穴には、排水や通気のために意図的に開けてあるものがあります
  • 下地処理を省いて塗らない。密着していない塗膜は、撤去や下地処理が先に必要になることがあります
  • 同じコーキングでも、細いひび割れの補修は条件しだいで自分でできます。ただし塗装できる材料を選ぶこと
  • 掃除と点検は、DIYでできる外壁メンテナンスの基本です。まずは排水口や雨どいから

自分で手を入れた家は愛着が違いますし、手入れを続けている家は長持ちします。止めたいわけではありません。

ただ、次に塗装を頼むときの費用まで含めて考えると、触らないほうが安いところがあります。その線引きが「水の出口」と「塗装の下地」だ、という話でした。

迷ったら、埋める前に、塗る前に、一度見てもらってください。

わらじ@家事パパ

30代、家事・育児・仕事の三足のわらじを履く共働きパパ。本業はリフォーム専門の工務店に勤める二級建築士で、築年数の経った住まいの改修現場に携わっています。家事ラクグッズから住まいのメンテナンスまで、暮らしをちょっとラクにする話をパパ目線でお届けします。

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