「窓の建て付けが悪くなってきたので、サッシを交換したいんですが」
この相談は本当によく受けます。鍵がすんなり閉まらない、閉めても隙間から風が入ってくる、開け閉めが重い。どれも毎日のことなので、気になり出すと早く直したくなります。
ただ、実際に現地でお話しすると、多くの方が驚かれます。窓は、外壁の中に埋まっているからです。
ドアノブや網戸のように「外して、新しいものを付ける」とはいきません。ここを知らずに相談される方がとても多いので、この記事では、サッシ交換が実際にはどういう工事になるのかを、リフォーム専門の工務店で現場を見ている二級建築士として説明します。
なお、この記事に金額の相場は書きません。状態と工法で大きく変わるものを、数字だけ先に出しても判断の役に立たないからです。かわりになぜ金額に差が出るのかを書きます。仕組みが分かれば、見積もりを見たときに自分で読めるようになります。
その前に、まず確認したい3つ
読み進める前に、いま困っているのがどれかを決めておくと、この記事の読み方が変わります。
- 鍵が閉まりにくいのか
- 開け閉めが重いのか
- 隙間風が気になるのか
この3つで、選べる手が少し変わります。とくに寒さや結露が主な悩みなのか、窓の動きそのものが悪いのかで、進む方向が分かれます。たとえば隙間風なら内窓も選択肢になりますが、鍵の閉まりにくさなら別の見方が必要です。それぞれ後の章で触れます。
サッシ交換が大掛かりになる理由|窓は外壁の中に埋まっている
まず、ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。
サッシの枠は、部屋の中から見ると壁の面にぴったり納まっているように見えます。ですが実際には、枠の外周に「つば」のような部分があり、それが柱や下地に固定されたうえで、その上から外壁材がかぶさっています。
つまり、外側から見えているのは窓の一部だけで、枠の固定されている部分は外壁の下に隠れています。室内側も、枠のまわりは内装材で覆われています。
外すには、外壁を壊すことになる
この納まりなので、サッシそのものを取り外そうとすると、まわりの外壁を一部解体する工事になります。この工法は「はつり工法」と呼ばれます。
壊すのは窓のまわりだけですが、それでも外壁に穴を開けることに変わりはありません。新しいサッシを入れたあとは、防水の処理をやり直して、壊した外壁を復旧して、仕上げまで戻す作業が必要になります。
「サッシを買ってきて付け替える」というイメージとは、かなり違う工事です。
費用が上がるのは、関わる職人が増えるから
「なぜそんなに高いのか」という質問もよく受けます。答えははっきりしていて、サッシ屋さんだけでは終わらないからです。
はつり工法で交換する場合、少なくとも次の工事が加わります。
- 大工工事:窓まわりの下地をつくり直し、室内側の枠や内装を復旧する
- 左官工事や外壁復旧工事など:外壁の種類(モルタル・サイディングなど)に応じて、壊した部分を復旧する
- 塗装工事:復旧した部分を仕上げ、まわりと色を合わせる

窓ひとつ替えるだけでも、大工・左官・塗装など複数の職種が関わることがあります。それぞれに手間と日数がかかり、職人の日程を合わせる必要も出てきます。金額が上がるのは、材料であるサッシが高いからではなく、ここです。
色を合わせるのが難しいこともある
塗装で復旧するとき、既存の外壁は年数ぶんの日焼けがあります。同じ色で塗っても、その部分だけ新しく見えることがあります。
気になる場合は面ごと塗り直すことになりますが、そうすると足場が必要になり、工事の規模が外壁塗装まで広がることがあります。外壁の塗り替えを考えている時期であれば、外壁塗装は10年で必要?サイディングの家で先に見るのは「目地」もあわせて読んで、まとめられないか検討してみてください。足場を二度組まずに済むかどうかは、総額に効いてきます。
建て付けや鍵の不具合は、調整では戻らないことが多い
ここで、期待を持たせない話を先に書いておきます。
「調整で直りませんか」と聞かれることがあります。戸車の高さを変えたり、鍵の位置を動かしたり、といった方法です。
正直に書くと、私が伺った範囲では、不具合が気になる段階まで進んでいると、調整だけでは改善しないことが多いです。部品の調整で戻せる範囲を過ぎていることが多いためです。年数の経ったサッシは交換部品が手に入らないこともあります。
もちろん、見てみないと分かりません。ただ「まず調整してもらえば安く済むはず」と考えて動くと、思っていた話と違うと感じることになります。調整で改善する場合もありますが、交換が選択肢に入るかどうかも含めて相談したほうが、結果的に段取りが早くなります。
サッシ交換で壁を壊さない方法|カバー工法
ここまで大掛かりな話が続きましたが、条件が合えば壁を壊さずに済む方法があります。カバー工法です。
既存のサッシ枠を残したまま、その上から新しい枠をかぶせて取り付ける方法です。外壁を大きく解体せずに済むので、大工・左官・塗装の復旧工事が要りません。

- 工事が早い。1か所であれば1日で終わることもあります
- 復旧工事がないぶん費用を抑えやすい
- 外壁を壊さないので、仕上がりの色が合わない心配がない
ただし、窓は一回り小さくなる
既存の枠の内側に新しい枠を入れるので、開口部はそのぶん狭くなります。ガラス面が小さくなり、見た目の印象も少し変わります。
どのくらい小さくなるかは既存の窓と製品によって違います。気になる場合は、事前に寸法を出してもらってください。掃き出し窓のように人が通る窓では、通りやすさが変わることもあります。
できるかどうかは、見てみないと分からない
ここが大事なところです。カバー工法は、どの窓でもできるわけではありません。
既存の枠の状態や形状、まわりの納まり、製品の対応条件によっては、カバー工法を選べないことがあります。写真や寸法だけでは判断しきれないので、実際に現場を見てもらう必要があります。
「カバー工法でお願いします」と指定して依頼するより、「カバー工法ができるかどうかも含めて見てください」と伝えるほうが、話が正確に進みます。
雨戸が付いている窓は、条件がさらに厳しくなる
あまり書かれていない話なので、ここは詳しく書きます。
雨戸やシャッターが付いている窓では、カバー工法の条件が一段厳しくなります。理由は2つあります。
1.雨戸のレールと干渉しないか
新しい枠をかぶせると、そのぶん枠が外側に出てきます。その位置に雨戸のレールがあると、干渉して収まらないことがあります。雨戸が動かなくなっては意味がないので、ここは事前に確認が必要です。
2.雨戸ごと交換できる製品は、条件が限られる
雨戸やシャッターも含めて改修できる製品もありますが、既存の形式や納まりによって、対応できる条件はさらに限られます。既存の雨戸の取り付き方によっては選べません。
雨戸付きの窓を検討している場合は、相談の段階で「雨戸が付いています」と必ず伝えてください。これが後から分かると、出した見積もりが組み直しになります。窓だけの写真ではなく、雨戸を含めて外から撮った写真があると話が早いです。
窓そのものを触らない選択肢|内窓
ここまで読んで「思ったより大変そうだ」と感じた方もいると思います。もうひとつ、既存の窓を残したまま、室内側にもう一つ窓を付ける方法があります。内窓(二重窓)です。
外壁も既存のサッシも触らないので、工事は室内だけで終わります。断熱や結露、音の面では効果が期待できます。
ただし、この記事の相談内容がそのまま解決するわけではありません。ここは正直に書いておきます。
- 建て付けの悪さや鍵の不具合は、そのまま残ります。既存の窓は動かさないためです
- 隙間風は、内窓が内側で塞ぐぶん体感は変わることがありますが、既存サッシの隙間そのものは残ります
- 窓が二重になるので、開け閉めの手間は増えます
内窓は「効く家」と「あまり変わらない家」があります。判断の材料は内窓は効果ない?二重窓が効く家・注意が要る家の違いにまとめました。結露が主な悩みであれば、そもそも窓の交換以外に手があります。その場合は結露は拭いても止まらない?のほうが近い話です。
相談するときに伝えておきたいこと
見に来てもらうときに、次のことを伝えておくと話が早く進みます。
- 困っていること(鍵が閉まらない/隙間風/開け閉めが重い/寒い、など)
- 雨戸やシャッターの有無
- その窓が何階のどこにあるか(足場が要るかどうかに関わります)
- 外壁の塗り替えを近いうちに考えているかどうか
とくに「困っていること」を先に伝えるのが大事です。「サッシを交換したい」だけだと交換前提の話になりますが、困りごとから伝えると、内窓やほかの方法も含めて提案が返ってきます。
進め方|複数の会社に現地を見てもらう
窓の工事は、カバー工法が使えるかどうかで内容も金額も大きく変わります。だからこそ、1社だけの提案では、それが妥当なのか比べようがありません。
見てもらうときは、聞くことを揃えておくと比べやすくなります。
- カバー工法が使えるか。使えない場合はその理由
- カバー工法の場合、開口部がどれだけ小さくなるか
- はつり工法の場合、大工・左官・塗装がそれぞれ入るか
- 足場が必要か
- 工期と、その間に窓が開いたままになる時間があるか
見積書の読み方についてはリフォームの見積もりが高い?妥当か見分ける5つの視点にまとめています。「一式」としか書かれていないときの聞き方も書いたので、あわせて確認してみてください。
なお、窓の断熱改修については国や自治体の補助制度が用意されることがあります。内容も受付期間も年度によって変わるので、金額や条件はここでは書きません。検討する時期に、お住まいの自治体と国の公式サイトで最新のものを確認してください。申請に慣れている会社かどうかも聞いておくとよいところです。
リフォームを安心に安く|リフォーム比較プロよくある質問
窓を大きくすることはできますか
開口部の大きさを変える工事は、外壁だけでなくまわりの下地や構造に関わる部分にも手を入れることになります。建物によってできる・できないが分かれますし、費用も工期も大きくなります。まずは現地を見てもらったうえで、可能かどうかを確認してください。
自分で交換できますか
おすすめしません。サッシの交換は外壁の防水と一体の工事です。防水の処理が適切でないと、雨水が壁の中に入る原因になります。網戸の張り替えやガラスの部分的な交換とは、性質がまったく違う作業です。
サッシ交換ではなくガラスだけ交換できますか
ガラスの交換だけで対応できる場合もあります。ただし鍵の閉まりや建て付けの悪さは、ガラスではなく枠や戸車の側の問題なので、この記事で挙げたような不具合には効きません。何に困っているかによって、選ぶ手が変わります。
マンションでもサッシ交換できますか
マンションの窓は共用部分として扱われていることが多く、個人の判断で交換できないのが一般的です。管理規約を確認し、管理組合に相談してください。室内側に付ける内窓であれば認められている場合もありますが、こちらも規約次第です。
まとめ|「外して付ける」ではなく「壁ごと直す」工事
サッシ交換が思ったより大掛かりになるのは、窓が外壁の中に埋まっているからです。取り外すには外壁を壊すことになり、そこから大工・左官・塗装の工事が加わります。金額が上がるのはサッシが高いからではなく、ここです。
ただし、条件が合えばカバー工法という方法があります。壁を壊さないので早く、費用も抑えやすくなります。使えるかどうかは現場を見ないと分かりません。とくに雨戸が付いている場合は、レールとの干渉があるため条件が厳しくなります。
建て付けや鍵の不具合は、調整で戻ることはほとんどありません。そのぶん、「サッシを交換したい」ではなく「これに困っている」から相談を始めるほうが、内窓を含めた選択肢が出てきます。
急いで決める必要はありません。雨戸の有無と困っていることを伝えて、2〜3社に現地を見てもらってから判断しても、多くの場合は十分間に合います。
「カバー工法ができるか」「雨戸との干渉はないか」の2点だけでも確認してもらうと、見積もりの比較がぐっとしやすくなります。


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