タイル張りのお風呂が寒い、掃除がしんどい。ユニットバスにしたいと考えたとき、多くの方はまずカタログを見て、サイズと商品を選ぼうとされます。
ところが在来工法の浴室の場合、解体してどれくらい広がるかは、おおよその見込みは立つものの、数センチの幅が残ります。仕上げの厚みは現場ごとに違うからです。そして、ぎりぎりのサイズを狙うほど、その数センチが効いてきます。
この記事では、リフォーム専門の工務店で現場を見ている二級建築士として、次の2つをお伝えします。
- 解体後に広がる寸法には数センチの幅が残るので、ぎりぎりのサイズを狙うと判断が難しくなります
- 費用は浴室の中だけで決まりません。出入口まわりと給湯まわりが乗ってくることがあります
不安をあおる話ではありません。先に知っていれば、見積もりの読み方も、サイズを決めるときの考え方も変わります。そのための記事です。
在来浴室からユニットバスへの工事は「入れ替え」ではありません
最初に、この工事の性質だけ整理させてください。ここを押さえておくと、あとの話が全部つながります。
在来工法の浴室は、現場で造る浴室です。下地をつくり、防水の処理をして、モルタルやタイルで仕上げていく。だから寸法は、その家に合わせて決まっています。多少いびつな形でも、現場で納めることができます。
一方でユニットバスは、工場でつくられた床・壁・天井の部材を、現場で組み立てるものです。床パンも壁パネルも、決まった寸法でできています。組み立てるためには、その寸法が収まるだけの空間が必要になります。
つまりこの工事は、古いお風呂を新しいお風呂に取り替える作業ではなく、「現場に合わせて造ってあったもの」を壊して、「決まった寸法の箱」を置き直す工事です。
ユニットバスのサイズは「1616」「1216」のように呼ばれます。これは幅と奥行の寸法を表すサイズ呼称で、実際の設置には、その外側に組み立てのためのスペースなども必要になります。置きたい箱の寸法が先にあって、それが入る空間が家の側にあるかどうか、という順番になります。
広がる寸法は読めます。読み切れないのは「誤差」のほうです
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
測れるのは仕上げの表面まで。ただし、見込みは立ちます
現地を見せていただくとき、私たちが測れるのはタイルの表面から向かい側のタイルの表面まで、つまり仕上がった状態の寸法です。
ただ、その内側にはタイルの厚み、モルタルの厚み、下地、そして柱や間柱といった構造材が入っています。解体して出てくるのは、この構造材の面です。そして、ユニットバスが収まるかどうかを最終的に決めるのは、仕上げの寸法ではなく、この構造材の位置のほうです。
とはいえ、何も読めないわけではありません。タイルとモルタルには厚みがあるので、それを撤去すればそのぶん広がります。片側でおよそ3cm、両側で6cm前後広がる、というくらいの見込みは立ちます。実際、私たちもその見込みで話を進めます。
ただし、この数字をあてにして寸法を詰めないでください。モルタルの厚みは現場ごとに違いますし、同じ浴室でも面によって差が出ます。読み切れないのは、広がる量そのものではなく、そこに残る数センチの誤差のほうです。

壁を壊しても、思ったほど広がらないことがあります
「壁の仕上げを落とせば、そのぶん広くなるのでは」と思われるかもしれません。実際、タイルとモルタルには相応の厚みがあります。
ただし、仕上げや下地を撤去した先には、柱や間柱などの構造材が残っています。柱や土台などは建物を支える部材なので、浴室を広げたいという理由だけで自由に動かせるものではありません。仕上げを撤去しても、構造材の位置が寸法の限界になることがあります。
実際に私が関わった現場でも、ぎりぎりのサイズを入れる前提で解体したところ、想定していたほど広がらなかったことがあります。広がること自体は見込みどおりでも、その数センチが足りない。ぎりぎりを狙っていると、この誤差がそのまま効いてきます。
家の傾きで、柱が当たることがあります
もうひとつ、事前には読みにくいものがあります。建物のわずかな傾きです。
年数の経った家では、柱が完全に垂直のままとは限りません。上下でわずかに位置がずれていることがあります。普段の生活で気づくような量ではなくても、寸法の話になると効いてきます。
というのも、ユニットバスは箱の形をしていて、建物に合わせて傾いてはくれないからです。柱が少し内側に出ている場所があれば、そこが基準になります。平均でも、いちばん広いところでもなく、いちばん狭いところで決まります。

私が関わった現場では、解体後に柱の一部が1cmほど当たり、その部分を削って納めたことがあります。そのときは、削る量と位置、その柱が担っているものから、支障がないと判断して進めました。
ただし、これは「1cmまでなら削っていい」という話ではありません。柱は、建物のどこにあるか、何を支えているかなどによって扱いが変わります。同じ1cmでも、そのまま削ることが適切な場合と、削るべきではない場合があります。当たったときにどうするかは、その場で見て判断することになります。
家の傾きそのものが気になる方は、築40年の家は地震で大丈夫?新耐震でも確認したい家の特徴もあわせて読んでみてください。浴室の工事とは別に、建物全体として見ておきたい部分をまとめています。
解体して初めて分かるのは、寸法だけではありません
在来浴室は水を使う場所なので、解体したときに土台や柱の下のほうが傷んでいるのが見つかることがあります。長い年数のあいだに、防水の弱くなった部分から水が回っていた、というケースです。
傷みが見つかれば、そこを直してからユニットバスを設置することになります。これも、解体前に確実に分かるものではありません。
この「開けてみないと分からない」という構造は、浴室に限った話ではありません。中古住宅を見るときに何が読めて何が読めないかは、中古住宅の内見チェックリストに整理しています。考え方は同じです。
だから「ぎりぎりのサイズ」は、選び方が難しくなります
ここまでの話をまとめると、広がる寸法はおおよそ読めても、数センチの誤差が残るということになります。この前提に立つと、サイズ選びの考え方が変わります。
大きいサイズを選べば、当然お風呂は広くなります。ただ、ぎりぎりを狙うということは、解体後に数センチ足りなかったときの逃げ道が少ないということでもあります。
1サイズ下げるのは、悪い判断ではありません
「せっかく工事をするのだから、入るなら大きいほうを」と考えたくなるのは自然だと思います。ただ、1サイズ下げる選択は、我慢して妥協するという意味ばかりではありません。
サイズが変わると、主に洗い場の広さと浴槽の大きさが変わります。ここで考えていただきたいのは、その差が、実際の使い方でどれくらい効くのかという点です。
- 小さいお子さんと一緒に入る時期がある → 洗い場の広さが効きます
- 浴槽につかる時間を大事にしたい → 浴槽の寸法が効きます
- 介助や将来の手すりを考えている → 洗い場の動ける範囲が効きます
優先したいものが決まっていれば、サイズを下げても、下げる方向を選べます。「とにかく大きいほう」で決めてしまうと、この選び方ができません。
サイズは、解体する前に決めきることになります
ここが、ぎりぎりを狙うかどうかを考えるうえでいちばん大事なところです。
ユニットバスは、発注してから現場に届くまでに3週間ほどかかることが多いです(商品や時期によって変わります)。工場でつくられてから運ばれてくるので、解体したあとで「やっぱり1つ小さいものに」と言っても、その場で取り替えることはできません。
つまり、「入らなかったら、そのとき考えましょう」は成り立ちません。解体して入らないと分かった時点で選べるのは、現場で納める工夫をするか、作り直しを待つかになります。そして待っているあいだ、お風呂は使えません。
だからこそ、打ち合わせの段階で確認しておきたいのは、次のような点です。
- ぎりぎりのサイズにした場合、入らなかったときに何が起きるのか
- 1つ小さいサイズにすると、洗い場と浴槽がどれくらい変わるのか
- いつまでにサイズを決める必要があるのか(発注の期限)
ぎりぎりを狙うのが悪いわけではありません。ただそれは、数センチの誤差を引き受けるという判断です。引き受けたうえで選ぶのと、知らないまま選ぶのとでは、あとの納得がまったく違います。
費用は、浴室の中だけでは決まりません
もうひとつ、見積もりを見たときに「これは何の費用だろう」となりやすい部分があります。浴室の外側に出ていく工事です。
浴室のリフォームなのだから浴室の中で完結するはず、と思われるのは自然です。ただ実際には、浴室の外に出ざるを得ない理由が構造の側にあります。代表的なものを2つ挙げます。
出入口の寸法が変わるので、脱衣所側の壁も触ります
在来浴室の出入口は、その家に合わせて造られています。一方でユニットバスには、製品として決まった寸法のドアが付きます。
そうすると、開口の大きさや位置が今までと変わります。私が関わる現場では、出入口の寸法や位置が変わるケースが多くあります。そのため、脱衣所側との取り合い、つまりドアまわりの壁や床の見切りを直す工事が、あわせて必要になることがあります。
「浴室を替えただけなのに、脱衣所の壁紙の話が出てきた」というのは、手を広げているのではなく、出入口が変わる以上、そこを塞がないと仕上がらないからです。
なお数は多くありませんが、出入口が2か所ある浴室(脱衣所と、勝手口や台所の両方から入れるつくり)もあります。ユニットバスはドアの位置が決まっているので、その場合は片方をふさぐことになります。当てはまる場合は、どちらを残すかを早めに決めておいてください。
設備が壁の内側とつながっているために工事の範囲が広がる、という構造は、窓でも同じことが起きます。サッシ交換は簡単?窓が外壁に埋まっている話と、費用が上がる理由で詳しく書いています。
追い炊きの方式によっては、給湯器の交換が必要になります
もうひとつが給湯まわりです。ここは見積もりの金額に影響しやすいので、先に知っておく価値があります。
古い浴槽には、追い炊きの穴が上下に2つ空いているタイプがあります。お湯が自然に循環する方式のもので、在来浴室では今も見かけます。
これに対して、現在のユニットバスでは、穴が1つのタイプに対応した仕様が一般的です。ポンプでお湯を循環させる方式で、給湯器側もその方式に対応している必要があります。
そのため、今が2つ穴のタイプであれば、浴槽を替えるのにあわせて給湯器の交換が必要になることがあります。浴室の工事に給湯器の費用が乗ってくるのは、こういう理由です。
お風呂の追い炊きの穴がいくつあるかは、ご自宅ですぐ確認できます。見積もりを取る前に見ておくと、その場で話が早くなります。
窓や電気も、あわせて出てくることがあります
このほか、浴室の窓の大きさや位置がユニットバスの壁パネルと合わない場合には、窓まわりの納まりを変える工事が出てくることがあります。換気扇や照明の電気の配線も、位置が変われば手を入れることになります。
いずれも、浴室の中の商品代とは別に出てくる費用です。見積もりを見るときは、この「外側に出ていく部分」がどう扱われているかを見てください。
見積もりで見るのは「開けてから変わる部分」の書かれ方です
ここまでの話を、見積もりの読み方に落とします。
在来浴室のユニットバス化では、寸法の数センチの誤差にしても、下地の傷みにしても、解体するまで確定できない部分が残ります。これは、その会社が不親切だからとは限りません。壁の内側に隠れている部分は、事前の調査だけでは判断できないことがあるからです。
だからこそ、その不確定な部分を、見積書がどう扱っているかに差が出ます。見ていただきたいのは次の3点です。
- 土台や柱に傷みがあった場合の扱いが書かれているか(金額が別途なのか、どこまで含むのか)
- 出入口まわりの補修が入っているか(脱衣所側をどこまで直すのか)
- 給湯器が含まれているのか、別なのか
この3つが書かれていない見積もりは、金額が安く見えることがあります。安いのではなく、まだ入っていないだけ、という可能性があるからです。そして工事が始まってから追加になると、比較のしようがなくなります。
逆に、「ここは開けてみないと分かりません」と正直に書いてある見積もりは、不安な見積もりではありません。むしろ現場を分かっている書き方だと思います。大事なのは、分からないことが分からないまま金額だけが出ていないか、という点です。
1社だけだと、その扱いが親切なのかどうかも判断しにくいところがあります。何社かに見てもらうと、同じ家について説明の仕方がどう違うかを比べられます。その場で工事を決める必要はありません。
出てきた金額の見方はリフォームの見積もりが高い?妥当か見分ける5つの視点にまとめています。安いほうを選べばいいという話ではないので、あわせて読んでもらえればと思います。
リフォームを安心に安く|リフォーム比較プロよくある質問
在来浴室でも、必ずユニットバスにできますか
多くの場合は可能ですが、どのサイズが入るかは家によって変わります。寸法が厳しい場合は、小さいサイズを選ぶ、納まりを工夫するといった方法があります。それでも難しい場合は、在来のまま防水や仕上げをやり直すという選択肢もあります。「できるかどうか」より「どのサイズなら入るか」で相談されるほうが、話が進みやすいと思います。
解体してから金額が上がるのは、よくあることですか
解体後に土台や柱の傷みが見つかれば、その補修が追加になることはあります。ただ、あらかじめ「見つかった場合はこうします」と説明があったかどうかで、受け取り方はまったく違います。契約前に、その説明があるかを確認しておいてください。
柱を削ると聞くと不安ですが、大丈夫なのでしょうか
削る量と位置、その柱が何を支えているかによって判断が変わります。「何センチまでなら大丈夫」という一律の基準として考えるものではありません。当たった場合には、なぜそう判断したのかを説明してもらってください。説明できる内容かどうかが、判断材料になります。
浴室の寒さは、ユニットバスにすれば解決しますか
タイルの床に比べれば、足元の冷たさは感じにくくなることが多いです。ただ浴室の寒さは、窓や周囲の断熱の状態にも左右されます。浴室だけの問題として考えないほうが、結果的に納得しやすいと思います。家の中の温度や湿気の考え方は、結露は拭いても止まらない?結露しやすい家の特徴でも触れています。
まとめ
在来浴室からユニットバスへの工事について、押さえておきたい点をまとめます。
- 広がる量の見込みは立ちます(仕上げの厚みぶん)。読み切れないのは、そこに残る数センチの誤差のほうです
- 仕上げを撤去しても、その先には構造材が残ります。構造材の位置が寸法の限界になることがあります
- 家のわずかな傾きで柱が当たることがあります。ユニットバスは箱なので、いちばん狭いところで決まります
- ユニットバスは発注から届くまでに時間がかかるので、サイズは解体前に決めきることになります(解体後にその場で小さくすることはできません)
- 費用は浴室の中だけでは決まりません。出入口まわりの補修と、追い炊きの方式による給湯器の交換が乗ることがあります
- 見積もりは「開けてから変わる部分」の書かれ方を見てください。書かれていない見積もりは、安いのではなく入っていないだけかもしれません
お風呂は毎日使う場所なので、「広いほうがいい」と考えるのはもっともだと思います。ただ在来浴室の場合、寸法には最後まで数センチの誤差が残ります。
それを知らないまま進めると、解体の日に急な判断を迫られます。先に知っていれば、「どちらになっても納得できる決め方」を、落ち着いて選んでおけます。この記事が、その準備の役に立てばうれしいです。
なお、この記事は情報提供を目的としたもので、個別の住宅についての診断を行うものではありません。実際の判断は、現地を見た担当者にご確認ください。


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